• jaxa
  • 観測ロケット実験

COLUMN

プロジェクトを俯瞰的に見る経験から得たこと

東京大学大学院 工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士2年
粟木 早恵

 宇宙科学人材育成プログラムとしてS-520-34号機の試験や組み立て等の打ち上げ準備に参加させていただいた、東京大学の粟木です。私は、今まで数人で行う小規模なプロジェクトへの参加経験はありましたが、観測ロケットプロジェクトのような規模が大きく長期に及ぶプロジェクトへの参加経験はありませんでした。本プログラムにおいてこのようなプロジェクトの現場を学生の立場で見る機会をいただいたことは、今後のキャリアを考える上でも大変貴重な経験となりました。

 今回の研修では、過去の研修を通して初めて、終始研修生のみで構成される班で活動を行い、各々が学びたい事柄を主体的に学ぶ機会が与えられました。最初は、観測ロケットグループでの作業の詳細はもちろん、班分け等の全体像から分からず戸惑いもありましたが、自身の班では、プロジェクトをマネジメントする立場では、各段階でどのようなことを考え活動しているのかに着目して活動を進めました。ISASでの試験の際には、マネジメントの立場では、各班の方とコミュニケーションを取り進捗や問題が生じていないかを確認されており、このようなコミュニケーションが有事の際に円滑に対処するための鍵であることを知りました。そして仮に何か問題が生じ打ち上げが延期になる場合についても、別の打ち上げ時期をすでに用意しており、調整も済んでいるということをお聞きし、プロジェクトマネジメントにおける先手を打つことの意味を、より実感を持って認識できました。内之浦での研修では、組み立てから打ち上げ準備までの一連を見学しました。打ち上げ日までは、各班の作業場所で担当の方のお話を伺いましたが、特にレーダー班では、放球時に追跡の確認をしている様子を見学させていただき、小さな目印でも安定して追尾できることが印象に残っています。当初は、放球の目的は風の状況把握のみだと考えていましたが、裏ではそのような準備も行なわれていることを知り、実際に、把握していない範囲で同じような数えきれないほどの多くの準備がなされているのだと感じました。最終的に打ち上げを見ることは叶いませんでしたが、準備の現場を見ることができただけでも非常に価値のある経験でした。

 このような一連のプログラムを通して、自身の今後のキャリアに対する考えも少なからず変化しました。研修前までは、研究中心で日常を過ごしていたことから、今後工学の知識をさらに深め、将来的に技術者になる進路を中心に考えていました。しかしながら、本研修への参加を通して、どのような分野に進むとしても、今後何らかのプロジェクトや大きな企画に対してマネジメントする側からも関わりたいと考えるようになりました。マネジメント側はいかに先を読んで周囲よりも未来を歩くかが大事だ、という点が、本研修の中で一番印象に残っている学びです。その学びを今度はマネジメントの立場で実践し、今後プロジェクトを円滑に進められるようなスキルを身につけることができればと思います。

 最後に、本研修を通して終始非常に貴重な経験をさせていただき、多くの学びを得ることができました。この研修を企画していただいた皆様、現場で忙しい中でも快くご対応いただいた皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。

PUBLIC